読書地獄あるいは積本の栄え

ただの読書感想文

球体関節は性癖

初めに言っておくと、性的な表現があるので注意していただきたいです。

 

澁澤龍彦さんの「少女コレクション序説」を読みました。

本の冒頭でも澁澤さん自身が言うように「少女コレクション」という秀逸なタイトルに惹かれてしまい思わず手に取りました。澁澤さんの本は他に「快楽主義の哲学」しか読んだことなかったものの、その時も本文中での歯に衣着せぬ文体で論じていくエッセイがかなり好きでした。

少女コレクション、といっても生身の少女だけではなく人形のことを指してて、話もコンプレックスや近親相姦、果ては相手の中に投射する自分の歪みみたいものまで膨らんでいく相変わらず興味深い話が多かったです。表紙の四谷シモンさん作の人形が美しく儚げで、頁を開くと彼女のまた別の表情もみれてかわいいです。

内容の中では特に、近親相姦もまた自らに似ている者を愛するという点でナルシシズムの現れという考え方になるほどと思わされたり。汝の中に自らを見出すという視点、歪んだ愛を解剖していくことでまた人間の本質のようなものが見えてきて。その歴史を紐解いていくうえで、バッサバッサと有名作家たちについて言及していくので色々と大丈夫?!と思うところもあります。笑

そして、澁澤さんはエッセイの中で多くの小説に触れたりもするから気になる本がどんどん増えていくのです。澁澤さんが訳した「O嬢の物語」も気になる…。

あと、近親相姦の話で夢野久作の「瓶詰の地獄」が出てきたのは夢Q好きとしては嬉しかったです。

最後に…神様たち、地面に精液零しすぎでは?

 

おわり

懐中電灯恐怖症

初めてのヨコミゾです。

そう、「八つ墓村」(横溝正史/角川文庫)を読みました。

初横溝なので当然金田一耕助もお初なのです…

テレビでも昔、犬神家の一族をみたような記憶もあるけど子どもすぎてほとんど覚えてなくてスケキヨと御御足のイメージが強すぎて。

それで八つ墓村の感想はというと、想像以上に面白かった!さすが名作です。

ミステリーとしても謎がどんどん深まるし、どんどん事件が起こっていくし、怪しい人もどんどん増えて、これ収集つくの?!って思うくらいに凄まじい展開だった。もちろん最後には綺麗に纏まるし、これも驚いたことなんだけどめちゃくちゃハッピーエンドで。あと金田一耕助自身も言っていたけどほとんど活躍してない回だったらしく、もっと探偵やってる話も読んでみたくなった。他の作品にも手を出しそう…。

金田一も思っていた探偵とは少し違ってて。読む前はなんとなくズバズバ解いていくイメージを持ってた。でも、かなりオドオドもするしパニックになったりもするし、そうかと思うと探偵らしく頭がキレる場面もあるしで人間味のある人で面白い探偵さんでした。

それとミステリーだけじゃなくて、洞窟探索というアドベンチャーまでもあって夜読むと夢で何回か探検に出かけてた。超怖かった。アドベンチャー要素があることでミステリーとは違うドキドキ感を感じてページを進める手が本当に止まらなかった。まじ寝不足。

懐中電灯恐怖症なんてタイトルをつけたけどそんなに怖くはならないです。むしろ懐中電灯がないと無理ってくらい懐中電灯依存症になります。

やっぱりミステリーは面白いのです。

 

おわり

人生のハッピーエンド

無花果とムーン」(桜庭一樹/角川文庫)を読みました。

血の繋がらない兄が亡くなってしまった"拾われっ子"の月夜の一夏のお話。

この物語の主人公の月夜は父、長兄、次兄がいるところに拾われた少女。彼女にとっては年齢も近く明るい次兄の奈落と仲が良く、そんな奈落が目の前で亡くなる。それから父や兄貴、友達、奈落の彼女との関係のギクシャク、そして奈落と瓜二つの密と出会い月夜自身の秘密も明らかになっていく。

と、ざっくりはこんな流れなのだが、相変わらず桜庭さんのネーミングセンスや文体が好きでたまらない。名前から伝わる儚さや神秘性、文体も可愛らしく読みやすい。月夜の目線、月夜の言葉で進むから大切な人を亡くした悲しみがありありと伝わってくる。

それにしても、身近な人がいなくなってしまう悲しみ。自分自身、幸運にもあまり親族や友人の死を身近に感じることなくこれまで生きてこれた。が、今でも忘れない、忘れたくない方の死もあり。

残された人間である月夜が半狂乱になっていく様が苦しくて。

人の死を受け入れるのって本当に難しい。それが身近な人ならなおさら。

今生きている人間の死と向き合い。それを少し前向きに向き合える気がする。

そんな読後感。

 

おわり

そんなにいい親友はなかなかいない

少し前に罪と罰(ドストエフスキー/江川訳,岩波書店)を再読しました。

再読と言っても前回読んだのは新潮社から出てる工藤さん訳で、今回読んだのは岩波書店から出てる江川さん訳なので少し違うのかも知れない。というのも、前回読んだのがもうかなり前のことで正直今回読んだときもこんな流れだったっけ?とうろ覚えの部分も多く比較は出来ない。

しかし、今回読んでて前回の印象以上に読みやすかったというのが最初の感想だった。これは別に工藤訳が読みにくかったというわけではなく、江川訳では注釈で当時のロシアの社会情勢や聖書から引いてるところ、ドストエフスキーの私生活の反映が事細かく書いてあることも読みやすさに起因してるが、それ以上に活字慣れしたことやある程度の人生経験を積んで登場人物の感情の機微を感じ取れるようになったことが大きいと思う。

それで内容についての感想として、主人公のロジオンの罪を犯した時の必死さ、その後の自分のしたことあるいは捕まるかもしれない恐怖、焦り、そして正当化。この心情の流れはやっぱり絶品だった。

中盤以降に出てくる彼の罪を犯す権利がある人間とそうでない人間についての考えも面白いけど、実際それが正しいのかと言うとそんなことはなくて。彼は傲慢でもなんでもなくて、誰よりも自己肯定感が低い人間だったと思うし、それは彼一人では気づけなかったことなんだと思う。

それにしても、「罪と罰」に出てくる人達はいい人が多い。タイトルの親友こと、ラズミーヒンは大学生の時の友人でロジオンが1人狂ってひどく当たってきて喧嘩しても、その後も心配で様子を見に来たり引き戻そうとしてくれて、こんなに友達、しかも発狂しかけてる友のために頑張れる人はなかなかいないよ。でも、それもロジオンの本質的な優しさや孤独を理解していた故の信頼なのかな。

あと、もう1人、スヴィドリガイロフについても。彼の場合、いやらしくてしたたかな人間のようにもみえる。けど、ロジオンとは対になる人物で、どこまでも傲慢で孤独だったからロジオンがしなかった決断をしたのだと。彼の意義はきっとここにあると思う。

 

つらつらと書き続けてきたけど、京極さんも小説内で言ってたように批評も感想文も一つの作品でしかなくて、結局は実際に手を取って読んでみないと本当の感想は分からないので。ただ1人の感想文であることをお忘れなく。

おわり

消化不良の消化

日常的に本をたくさん読んで自分の中で咀嚼する。

 

そんな日々を送ってきたものの、活字にすることで新しく発見したり、より注意深く読むことに繋がるかなっておもって少しずつ読書感想文を書いてみようかななど。

 

まずは自己紹介として自分の好きな作家について少し。

一番初めにあげるのは、やはり夢野久作

有名な「ドグラ・マグラ」はもちろん、「笑ふ唖女」、「少女地獄」、「空を飛ぶパラソル」あたりも好き。

彼の作品の多くが当時精神病と呼ばれる人達を取り上げて、彼らに対する虐待や偏見を描くことで社会に訴えかけている様はこれこそ文学としての意義を感じる。やっぱり言葉で世の中と戦う人がかっこいい。

 

その他に好きな作家は、江戸川乱歩京極夏彦桜庭一樹村田沙耶香フランツ・カフカあたりで常識を当たり前のように打ち砕いてくる作品が大好きなのです。

 

と、最初はあまり長くも書けず、拙く読みにくいとも思うのでここまでにします。

 

おわり