読書地獄あるいは積本の栄え

ただの読書感想文

人生のハッピーエンド

無花果とムーン」(桜庭一樹/角川文庫)を読みました。

血の繋がらない兄が亡くなってしまった"拾われっ子"の月夜の一夏のお話。

この物語の主人公の月夜は父、長兄、次兄がいるところに拾われた少女。彼女にとっては年齢も近く明るい次兄の奈落と仲が良く、そんな奈落が目の前で亡くなる。それから父や兄貴、友達、奈落の彼女との関係のギクシャク、そして奈落と瓜二つの密と出会い月夜自身の秘密も明らかになっていく。

と、ざっくりはこんな流れなのだが、相変わらず桜庭さんのネーミングセンスや文体が好きでたまらない。名前から伝わる儚さや神秘性、文体も可愛らしく読みやすい。月夜の目線、月夜の言葉で進むから大切な人を亡くした悲しみがありありと伝わってくる。

それにしても、身近な人がいなくなってしまう悲しみ。自分自身、幸運にもあまり親族や友人の死を身近に感じることなくこれまで生きてこれた。が、今でも忘れない、忘れたくない方の死もあり。

残された人間である月夜が半狂乱になっていく様が苦しくて。

人の死を受け入れるのって本当に難しい。それが身近な人ならなおさら。

今生きている人間の死と向き合い。それを少し前向きに向き合える気がする。

そんな読後感。

 

おわり